堪忍袋

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怒り?そんなものもうどうでもいい。 怒る事さえ疲れて面倒でこの人に何を言っても無駄で、意味不明で人生の無駄遣い。 この人が私や娘に興味がないなら私も興味は持たない。 娘の父親で今はお金を持ってくる人、取り敢えずちゃんとお金をくれるからその分は働くし娘の父として対応する、それだけ。 それももう暫くの間だけの事だから娘の父親と思えば堪えられるし、取り敢えず人としてマシだと思える。 (沙知を可愛がるだけマシ。) 父親以外の存在価値はないけど、夫もそうだと思うからお互い様でしょ。 そんな風に一か月が過ぎ、幼稚園で父の日のプレゼントを描いたハンカチを、丁寧に先生が用意した紙袋に入れて、可愛い花柄のテープで止めて娘は持ち帰って来た。 迎えに行った時、先生から、 「沙知ちゃん、お父さんをよく見ていたんですね。お父さんが好きな物、きっとお優しい目で見てくれているんですね、羨ましいです。沙知ちゃんは少し描き忘れてしまったみたいでしたけど、上手に描けてましたよ。お楽しみにしてて下さいね。」 と言われたけど、意味不明だった。 帰りに沙知に何を描いたか聞いたけど、パパに見せたら見せると教えてくれなかった。 だけどその日、夫は話してあったにも関わらず午前様で沙知が幼稚園に行く時間になっても寝ていた。 起こしに行くと、今日は午後からでいいんだと寝てしまう。 沙知を幼稚園に送り、気になって会社に電話を掛けるとこんな言葉が夫の同僚から返って来た。 「実家のお義母さんの具合が悪いからって昨日から休みですよ?明日は出勤ですけど奥さんは…。」 「あぁ、それで!実は私も数日前から実家に戻ってまして、携帯電話が水に濡れてしまって自宅に電話しても夜でも出ないので心配になって…実家だったんですね。良かった。すぐそちらに電話してみます。ありがとうございました。」 不思議そうな相手の声を遮り、安堵らしい声を出した。 夫は嘘をついて有休を取り、昨日は何処かに泊まっていたという事になる。 娘との約束を破って。 これは私には大きな事で、振り切った怒りメーターが復活して爆発しそうだった。 娘の父親だから我慢出来たのだ。 娘との約束を守れない父親などいらない。 一緒にいる意味はない、幼稚園に行く時の沙知の項垂れた顔を思い出した。 きっと朝からお友達とパパが喜んでくれたと話すのだろう。 沙知一人、パパに渡せてないと言わなければいけない。 どうして?と言われるに決まっている。 (お泊まりなら最初から沙知にそう言えばいいのに!!この…クズ!!) ゴミは捨てよう、怒りを通り越した私の結論は出た。
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