意外な援軍

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広げたハンカチを見て夫は停止している。 「どれどれ…沙知は何を描いたのかなぁ?」 後ろから覗くと、広げられたそこには女の人と分かる顔の絵。 「上手ねぇ。」 と沙知に言いながらも、なんだか違和感。 私の髪はロング、描かれた絵は耳下までのボブ。 先生が書き忘れたと話していたのはこれか、と思いながら絵をよく見ると耳に小さな赤い丸。 (…………あ!!これピアス!) ピンと来た。 痛いのは嫌だから私は耳にピアスの穴なんか開けてないし、家事に邪魔だからイヤリングもしていない。 髪の毛も丁寧に一本一本、描かれていて娘の苦労が分かる。 それほど丁寧に描いておいて長さを間違える訳がない。 娘は描いたのだ。 先生の言う事を信じて、お父さんの大好きな物を。 微動だにしない夫の反応で夫も気付いていると分かる。 「上手ねぇ、沙知。ピアスなんかも凄く綺麗に描いてある。似てるねぇ。このお姉ちゃんにどこで会ったの?」 夫の体がビクッと動いた。 「あのね?この前、パパとかぜでお休みした日に、おまいみにきてくれたの。パパがどうぞって、おねえちゃん、おかしくれたんだよ。」 「沙知……、いや、「お見舞いに来てくれたんだ。良かったねぇ。会社の人?どうしてその時に言わないの?お礼も言わないままじゃない。」 夫の言葉を遮り顔を覗き込み言うと青い顔で言い訳をした。 「いや、近くに来たついでって!すぐ帰ったし!」 「へぇ〜〜沙知?お姉ちゃんどのくらいいたの?」 「うーん、沙知にルル見てなさいってパパが。ルルおわったっていったらかえるねって。」 「そっかぁ、ルルが30分だね。子供をアニメで夢中にさせて何してたのかなぁ?」 「な!何にも出来ないよ!沙知いるんだし!30分だし!お前だってすぐ帰るだろうし!!」 焦って自分が何言っているのか分かっているのかな、と思いながら冷たい視線を向けた。 「ルル見せて後ろの…そうだな、ここのドア閉めて?廊下でイチャイチャって感じ?キス位は出来るね。うん……それ以上も可能かな、気持ち悪っ!」 推理しながら実際に自分で動いて解説し、最後に思いっきり軽蔑の眼差しを向けて言ってやった。 「この家に女が来てそういう行為、子供がいるのにした時点で気持ち悪っ!だし、信じられない!やっぱり父親失格確定だわ!沙知、出掛けるよ、おいで!」 リビングの横のドアを開けて、和室に入り置いておいた鞄を手にリビングに出た。
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