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「待て、どこ行くんだよ!沙知の間違いだって!!絵を描く前に仲良くなったから描いただけだよ、な?沙知。」
必死で前に立ち、私を制して沙知に顔を向け聞く夫。
「お父さんのすきな物をかいたらいいっていわれたから、かんがえていたらパパがいってたから…いちばんすきだよ、いちばんだいすきだってきこえたの。いちばんってすきなものでしょ?だからおねえさんを描いたの。パパがうれしいとおもって。」
小首を傾げて、私、なにかした?みたいな顔で沙知が言い切った。
私は腹の底で笑いを堪えた。
「言ってたんなら……しょうがないよねぇ?」
「き、聞き間違いだよ!沙知の聞き間違い!言ってないから!」
「あのさ、その絵を見る前から知ってるよ、私。証拠もいっぱいあるし、あんたさ、詰めが甘いんだもん。沙知がいるのに家に上げる事も詰めが甘いでしょ。沙知は赤ちゃんじゃないしいつ私に話しても不思議じゃないのに、その娘の前で一番好きって言ったのに、間違いだって言うの?」
「聞き間違いだって!ただの見舞いで仕事の話をしてただけで…「父親としても最低になりたいの?沙知を嘘吐きにするの?その絵の人に夢中で家をちゃんと見ないから分からないのよ。ちゃんと見てみたら?証拠、沢山出てくるから!後日、離婚条件を書面にして届けるわ。さようなら!」
「えっ?離婚?し、しないぞ、離婚。」
「あんたが決める事じゃないの!」
家を出て取り敢えず不動産屋に駆け込んだ。
気にいる部屋はなくて、夕方にビジネスホテルに落ち着いた。
次の日、沙知が幼稚園の間に同じ不動産屋に前日の挽回とばかりにお勧めの部屋に案内してもらい、気に入ったので即契約した。
どうせ夫はいないから、家に帰り、荷物を持てるだけ特に沙知の本や洋服、靴などをまとめて、もう一つ鞄を出して自分の下着や洋服を追加した。
二人で暮らすのに必要と思う物、買い置きしておいた洗剤類、歯磨き粉、歯ブラシ、消耗品は頂いた。
ずっと前に準備しておいた離婚条件の用紙をテーブルの上に置いて、問題がなければ正式な書類にして頂きますとメモして家を出た。
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