922人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………」
葵は眉間に皺を寄せ、難しい顔つきになる。
「振られた理由は分かっているんです」
その声は深刻だった。
みちるは、もしかしたら地雷を踏んだのかもしれないと、冷や汗をかく。
「二度目のデートでプロポーズしたら、彼女に警戒されたようで」
「そうですね。少し早いかもしれません」
「だけど、無駄でしょう? 結婚が目的なのに、前段階でだらだらと時間やお金を使うなんて。俺は無駄だと思う」
葵は、自分の言い分はさも当然といった調子だった。
「ああ、分かりました。振られた理由……」
うっかり声に出てしまい、みちるは慌てて口をつぐんだ。
――この人、情緒がまったくないんだ……。
イケメンで、ハイスペで、趣味もセンスもいいのに、女性心理をまったく読み取れないヒーローを思い浮かべる。設定では、SSR級の王子様だった彼。
――ついこの間、ダメ出ししたやつだ。
編集者であるみちるは、担当している作家に「そのヒーローじゃ読者がつかないので、キャラを変更してください」と指示したばかりである。
――惜しい……。
最初のコメントを投稿しよう!