第一条 互いを愛称で呼び合うべし

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「…………」  葵は眉間に皺を寄せ、難しい顔つきになる。 「振られた理由は分かっているんです」  その声は深刻だった。  みちるは、もしかしたら地雷を踏んだのかもしれないと、冷や汗をかく。 「二度目のデートでプロポーズしたら、彼女に警戒されたようで」 「そうですね。少し早いかもしれません」 「だけど、無駄でしょう? 結婚が目的なのに、前段階でだらだらと時間やお金を使うなんて。俺は無駄だと思う」  葵は、自分の言い分はさも当然といった調子だった。 「ああ、分かりました。振られた理由……」  うっかり声に出てしまい、みちるは慌てて口をつぐんだ。  ――この人、情緒がまったくないんだ……。  イケメンで、ハイスペで、趣味もセンスもいいのに、女性心理をまったく読み取れないヒーローを思い浮かべる。設定では、SSR級の王子様だった彼。  ――ついこの間、ダメ出ししたやつだ。  編集者であるみちるは、担当している作家に「そのヒーローじゃ読者がつかないので、キャラを変更してください」と指示したばかりである。  ――惜しい……。
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