第一条 互いを愛称で呼び合うべし

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「ところで、羽山さんが振られた理由は何ですか?」 「ああ、それは……」  言いづらいが、自分だけ話さないわけにもいかないだろう。みちるは覚悟を決めて、重たい口を開いた。 「私の仕事が忙しいせいです。なかなか会えなくて」 「結婚して一緒に暮らせば良かったのでは?」 「まぁ、そうなんですけど……」 「相手が二の足を踏んだとか?」 「いいえ。翔平……彼は公務員で安定した職業についているのもあって、早くに結婚を望んでいた気がします」  プロポーズをされたわけではない。だけど、みちるは分かっていた。翔平が、中途半端な関係に不満を感じていると。  ――とっくに、ラストは分かっていたのに。  決断できなかったのはみちるのほうだ。翔平と出会ってからこれまでの思い出をなかったことになんて、簡単にはできなかった。  ――ずるずると引き伸ばしたのは、私だ。  もしかしたら、翔平は嫌な役回りを引き受けてくれたのかもしれない。  ――私の気持ち、とっくにバレてたんだ……。
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