922人が本棚に入れています
本棚に追加
「ところで、羽山さんが振られた理由は何ですか?」
「ああ、それは……」
言いづらいが、自分だけ話さないわけにもいかないだろう。みちるは覚悟を決めて、重たい口を開いた。
「私の仕事が忙しいせいです。なかなか会えなくて」
「結婚して一緒に暮らせば良かったのでは?」
「まぁ、そうなんですけど……」
「相手が二の足を踏んだとか?」
「いいえ。翔平……彼は公務員で安定した職業についているのもあって、早くに結婚を望んでいた気がします」
プロポーズをされたわけではない。だけど、みちるは分かっていた。翔平が、中途半端な関係に不満を感じていると。
――とっくに、ラストは分かっていたのに。
決断できなかったのはみちるのほうだ。翔平と出会ってからこれまでの思い出をなかったことになんて、簡単にはできなかった。
――ずるずると引き伸ばしたのは、私だ。
もしかしたら、翔平は嫌な役回りを引き受けてくれたのかもしれない。
――私の気持ち、とっくにバレてたんだ……。
最初のコメントを投稿しよう!