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結婚より、今は仕事がしたかった。学生時代から憧れていた出版社に就職し、仕事ものってきたところだ。それに、一番の目標であるファッション誌の編集には、まだ携われていない。
葵はワイングラスを手にとった。
「羽山さんが結婚を望んでないってことか……」
そう言って、一口ワインを飲む。
「だったら、別れて正解じゃないですか? 同じ方向を向いていない二人が一緒にいるなんて無駄ですよ」
容赦ない葵の正論に、みちるは少しばかり反感を覚える。いつものみちるなら、この程度のことで言い返したりしなかったはずだ。
「そんな風に割り切れないのが感情だし、恋愛だと思いますが」
「恋は盲目。恋愛は単なる心のバグです。さっき話しませんでしたっけ?」
「川瀬さんのお考えはそうかもしれませんね。だけど、少なくとも私にとっては違います」
「証明しましょうか? 恋愛がバグだって」
葵が挑戦的な笑みを浮かべる。
「どうやって?」
「羽山さんをバグらせて、俺に恋愛感情を抱かせるんです」
みちるは目を丸くする。
そしてすぐに笑い出した。
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