第一条 互いを愛称で呼び合うべし

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「それ、おかしいっ……! そんなことできるんだったら、川瀬さん、今頃とっくに結婚できてますよ」  みちるにお腹を抱えて笑われても、意外にも葵は冷静だった。 「だから、恋愛はバグなんです。恋愛と結婚は別です」 「私はそうは思いませんけど」  みちるは、軽く流してこの話を終わりにするつもりだった。葵と討論することが何よりの無駄である。どうせ明日には忘れてしまうのだから。  しかし、葵のほうはそうではなかったようだ。 「だったら試してみましょう。俺たち、疑似恋愛してみませんか?」 「疑似恋愛……?」  葵の表情があまりにも真剣で、さすがにみちるもそれ以上笑えなくなってしまうのだった。  食事を終えた二人は、ビルの屋上テラスから丸の内の夜景を眺めていた。美しいクリスマスイルミネーションは、失恋した者たちには眩しすぎたようだ。  みちるはただ無言でライトアップされた東京駅を見つめる。葵も何も言わない。ひたすら虚しいだけの時間が過ぎる。  それでも、どちらも「帰ろう」とは言わなかった。
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