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第一条 互いを愛称で呼び合うべし
シャンパンゴールドにきらめく、クリスマス・イブ。
東京駅丸の内駅前広場は、美しいイルミネーションで飾られ、ロマンチックな夜を演出していた。大勢の人たちが、輝くツリーやスクリーンに映し出される幻想的な映像を、スマホの動画や写真に収めている。
特別な夜に誰もが華やいだ表情を浮かべる中、慌てた様子の女性が一人。
「もうこんな時間!」
イルミネーションを眺めるでもなく、羽山みちるはコートを脇に抱えたまま、スカートが千切れんばかりに疾走していた。
赤みがかったブラウンのタイトスカートはおろしたてであるが、伸びようが裂けようが、今は気にする余裕もない。とはいえ、二十八歳という年齢を考えれば、もう少し落ち着きがあってもいいはずだ。
みちるは、踵が脱げかかったパンプスで横断歩道を素早く渡り切ると、正面の商業ビルへ飛び込んだ。
「おおっ」
そこで、やっと立ち止まる。肩で息をしながら、目を見開いた。
「すごい」
アトリウムに飾られた真っ白なツリーの豪華さに、みちるは圧倒されていた。吹き抜けの天井に向かって伸びる巨大なツリーを見上げ、息を呑む。
「綺麗……」
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