第一条 互いを愛称で呼び合うべし

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 みちるの、シンプルなニットのトップスにワイドパンツというこなれ感のあるコーデは、デキる編集者をイメージさせるけれど……。 「ああ、今日も!」  明るいベージュ色のナチュラルロングヘアを、みちるはぐしゃぐしゃと掻きむしった。 「私のパソコンがー」  原稿の雪崩によって埋められたノートパソコンを救出することは、もはや日課である。昨年、現在のビルに引っ越した時に片付けたデスクは、数ヶ月も持たずにカオスと化した。  とりあえず原稿を横へやって、恐る恐るパソコンを起動する。  ――良かった。パソコン生きてる。  片付けられない性分のみちるは、再び雪崩が起きないことを祈りながらメールチェックをはじめた。一通り返信を終えたところで伸びをする。 「そうだ。桃園(ももぞの)先生の進捗も気になるな……」  桃園ぴーちは、みちるが担当する作家の一人である。まだ駆け出しではあるが、ゆくゆくは大人の恋愛小説レーベル『ラブロマンチカ』の看板作家となるのを期待されている。
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