第一条 互いを愛称で呼び合うべし

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 しかし、ツリーに見惚れている場合ではない。  行き交う人々にぶつからないよう気をつけながら、ゆっくりとツリーに向かって進んでいく。ツリーの根本に辿り着いたところで辺りを見回し、恋人の翔平(しょうへい)の姿を探した。 「まだ来てないのかな」  みちるは、バッグからスマホを取り出した。  時刻は午後八時。とっくに約束の時間は過ぎている。  ――珍しいな……翔平が待ち合わせに遅れるなんて。  とはいえ、前回のデートは半年前。正直なところ、みちるの恋は、自然消滅寸前だった。つまり、今夜こそ、挽回のチャンスだったのだ。  ――もっと早くに、連絡すれば良かったな。  しかし、付き合いの長い翔平なら、急な仕事で連絡ができなかったことくらいは察してくれているはずだ。それが過信であるなどと、今のみちるは思いもしない。  ――もしかして、翔平もトラブったのかな。  アプリを開きメッセージを確認するが、翔平からの連絡はない。そこでやっと、みちるは一抹の不安を覚える。 『遅刻してごめんね。翔平、今どこ?』  翔平へメッセージを送ったと同時に、頭上からため息が降ってきた。 「ふう。遅いな……」  それから、耳に心地よい低音も。
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