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だからと言って、じろじろ見るのは失礼だ。すると、反省して下を向いたままのみちるの足もとに影が落ちた。
「遅くなって、ごめん」
「ううん、そんな……えっ?」
翔平だと思って顔を上げると、まったく見知らぬ男性が立っていた。そして、淡いピンクの袖ファーコートを着た女性も。
「まぁくんのバカ。さびしかったぞ」
「みーたん、かわいい」
「もぉ、許さないんだからぁ」
可愛らしく頬を膨らませる彼女に、優しく微笑む彼氏。二人は人目もはばからず身体を寄せ合って、「まぁくん」「みーたん」を繰り返しながら行ってしまった。
――ないわー。
思わず、心の声が漏れそうになる。
あの二人が幸せなら他人には関係ない。関係ないのだが……。
「……みーたん」
再び低音ボイスが耳に届き隣を見ると、呆然とするイケメンの姿があった。
彼は大きなため息を吐き、高級時計をガン見する。そして、困り果てたように頭を掻いた。
みちると同じく、ラブラブぶりを見せつけられた上に待ちぼうけをくらっている隣のイケメンに、同調しそうになる。
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