第一条 互いを愛称で呼び合うべし

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 ――もう無理だってのは、なんとなく予感していたけど。  それでも、よりにもよってクリスマス・イブの夜に、別れ話はしてほしくなかった。 「…………惨めすぎる」  現実を受け止めるだけで精一杯だ。涙さえ浮かばない。そんなみちるの耳に届いたのは、淡々とした声だった。 「冷静になることだ」 「え……?」  みちるは、ギョッとして隣を見る。 「だから、こんなときこそ冷静になるべきなんだ。感情的になって相手を問い詰めたところで、復縁できる可能性は低いだろう」  間違いなくイケメンの低音ボイスは、自分に向けて発されたようだ。 「もしかして、私、アドバイスされてます?」 「アドバイス……まぁ、そうなるかな」  イケメンは少しだけ首を傾げた。  ――そちらだって、失恋したばかりですよね?  みちるは、「ははは」と、力なく笑うことしかできなかった。
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