第一条 互いを愛称で呼び合うべし

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 §  白い皿には、円を描くようにカラフルな野菜が盛り付けられている。パプリカ、かぶ、人参、ナス、ズッキーニ、アボカド……数十種類もの野菜からなる、まるでクリスマスリースのような美しい前菜を、みちるは食い入るように見つめていた。  向かいの席のイケメンは、白い皿の中央から、じゃがいものポタージュが入ったガラスの器を手にした。スプーンでひと掬い、上品に口へと運ぶ。 「あの、本当に、いいんですか?」 「ええ。せっかく予約していたのに、無駄にするのもなんですから。ごちそうしますよ。クリスマスプレゼントです」  イケメン――川瀬葵(かわせあおい)は、気さくな笑みを浮かべた。  出会ったばかりで正体不明の男性と、フレンチレストランの個室でクリスマスディナーをいただくという状況に、みちるは今さら戸惑っている。  ――勢いに押されて、付いてきてしまったけれど。  みちるのほうもやけっぱちだったのだ。  そうは言っても、偶然にも同時に失恋したという理由だけで、食事をごちそうになるなんてあつかましすぎる。せめて、自分のお代は払おうと思った。  ――赤の他人だもの……。
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