プロローグ 女子高生にして梓巫女

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 上之前神社には「苦しいときの巫女頼み」という言葉がある。意味は「苦しいときの神頼み」に近い。  上之前神社の梓巫女に祈りなさい。さすれば其方は救われる。病に苦しむ者には癒しを、恋煩(こいわずら)う者には真実の愛を授けよう。振り向けば梓巫女はそこにいる。  なんて、伝承も一人歩きすれば三文小説、これではストーカーだ。病気なら医者へ行くべきだし、女子高生が真実の愛を分かるはずがない。恋が成就した試しがなければなおさらだ。  梓巫女は万能ではなく金の卵を産む鵞鳥(がちょう)でもない。本来は各地を渡り歩く巫女で、口寄(くちよ)せを用いて霊を憑依させ、様々なお告げや呪いを行う。だから一夜漬けの知恵熱の治療や、恋のキューピッド役を頼まれても困る。困るけれど、悩む人を放っておけずに手を貸してしまう。  今回の依頼は梓巫女として納得して受けている。でも、友達が楽しむ姿を想像すると悲しくなってしまう。
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