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「あら、海。今日のご飯、外食にでも……って何があったの?」
珍しく帰宅している父、エプロン姿の母……今にも泣きそうな自分の手には、彩矢が「持って行きな」と言って渡してくれた、夕陽の写真。
「海?」
心配顔でこちらを見つめてくる両親の顔。確かにこうして見れば、夕陽によく似ている。
「お父さん……お母さん……。」
それ以降は言葉にならず、その場に泣き崩れてしまった。
驚いて傍に来てくれた二人に、写真を見せながら涙ながらに話す。
子供の頃だけの友達、その正体、彩矢の話……嗚咽混じりに話し終えた時、そっと母が抱きしめてくれた。
「そう……夕陽のことは、海が二十歳になってから話そうと思ってたけど、先に知っちゃったのね。」
頷くと、父がそっと頭を撫でてくれた。
「夕陽が死んだ、って聞いた時は、確かに怒りと悲しみで頭がどうにかなりそうだった。でもな……慰謝料を貰ったって、裁判で有罪判決下されたって、先生達を責めたって、夕陽は戻ってこない。そう思ったら、もう怒るのも馬鹿らしくなってな。周りが怒っているのを、ひたすらに眺めているだけだったよ。」
そっと両親を見ると、二人とも目が濡れている。
涙を流しながら微笑む父が、もう一度口を開く。その声は、わずかに震えていた。
「そうか……彩矢ちゃんは、真桜ちゃんのお姉さんだったのか。夕陽が、お前と真桜ちゃんを、引き合わせてくれたのかもな。」
写真の中の夕陽が、幸せそうな笑顔を浮かべている。
さっきと決して変わらないのに、不思議な安心感が溢れ、涙が止まらなかった。
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