幻の友人

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幻の友人

 遡ること、十年以上前。  「海、今日はどういう味付けにする? いつものふりかけご飯?」  「何も無い方がいい。」  「え? それだとただのお米じゃない、いいの?」  「いいの!! 海はそれがいい!」  はっきりと意見を言う自分、苦笑しながらも真っ白な白米をよそってくれるお母さん、海は自己主張がしっかり出来るんだなぁ、と新聞を捲るお父さん。  三人家族、でも私には、私だけに見えている友達がいる。  『海は今日、白いご飯でいいんだ。ちゃんと意見言えたね。偉い偉い。』  周りがぼんやりと光ってて、きっと色々な人が言ってる「幽霊」という存在なんだと思う。  でも、絵本の中に出てくる天使さんのような、真っ白なワンピースを着たとても綺麗な女の子。なぜか鏡の中に映る姿も、こうして横に立っている姿もちゃんと見えている。  でも、一度この子と喋っていたら、お父さんとお母さんに不思議そうな顔をされて、そしたらこの子が教えてくれた。  『私ね、海にしか見えていないんだよ。』  ニコニコ笑いながら、いつも意見を言えないでいる時、背中を押してくれる。そんな子だった。  ちゃんと意見を言えたら、偉いって褒めてくれる。だから、褒められるために、ちゃんと意見を言うようになった。  たまに言いすぎて、喧嘩になることもあったけど。
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