幻の友人

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 しばらく、周りの時間が止まったかのようだった。  ようやく音が戻ってきて、初めて彩矢の目を見る。じっと答えを待ってくれているのを察し、すぐに頷いた。  「そう……この子です。でも、この横に座っているの、彩矢さんですよね? 一体……この写真は?」  彩矢は何も言わずにそっと写真を外し、渡してくれた。  真桜と覗き込めば、シロツメクサの冠を被り、真っ白なワンピースを着た少女二人が、年相応の無邪気な笑顔で写る、まさに天使と形容出来る写真だった。  後ろには緑の中に点々と白色が見える、シロツメクサの野が広がり、その奥には青空が見える。  まるで……絵本の世界を切り取ったかのような、美しい世界。思わず見惚れていると、真桜がふと気が付いたかのような声を上げた。  「この女の子……海にそっくりだよ。」  「え?」  「待って、海、こっち見て。」  言われるがままに顔を向けると、写真を撮られる。  その写真と並べてみると、瓜二つ、今の自分の顔を幼くすれば、まさにこの顔になるのではないか、と言えるほど、そっくりなのが分かった。  「海ちゃん、貴女の名字、何て言うんだっけ。お父さんとお母さんの芸名じゃなくて、今普通に使っている名字。」  唐突に響いた彩矢の言葉に、思わず真桜と顔を見合わせてから口を開く。  「吹田(ふきた)です。笛とかを演奏する時に使う『吹く』に、田んぼ。それで吹田。」  そっと顔を上げた彩矢が、静かに微笑んだ。  「その子は、夕陽(ゆうひ)、吹田夕陽。私の大親友だった子で……海ちゃん、貴女のお姉さんだよ。」
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