異形の神たち

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 冥界の使者を器にしたまでは良いものの、人間に崇拝されたことによって、如月は神格まで有してしまい、東山の神たちからはと馬鹿にされて来たのだ。力を持ち得たところで、統括役になる気は起きないだろう。  だいたい白檀香も、自分がだかなんだか知らないが、大抵のことは意に従って進むと思い過ぎだ。馬鹿馬鹿しい。土地神の分際で、最高位の名を得ようなんてどうかしている。  そう言ってやろうと思った時、 「いや、お前にはその才がある」  という、白檀香の低い声が響いた。 「それに、統括役を投票で決めようとすれば、混乱を招くに違いない。もっと言えば、忖度し放題、煩悩透け放題で殺し合いになるだろう。まぁ、こちとら知ったこっちゃないが‥‥‥‥最終的には力を持つものに統括を任せる。という判断に行き着くはずだ。馬鹿なあいつらでもな」  白檀香の声を聞いていると、頭が痛くなってくる。立ち上がって電氣ブランを手に取り、蓋を開けて器に注ぐ。一気に飲む。 「あんな奴らの上に立っても、苦労が増えるだけだろう」  手の甲で口元を拭いながら言うと、白檀香はくくく、と意味ありげに笑った。 「だからこそさ。最高位の座をものに出来れば、気に入らない奴を虐げることも、追放することも出来る」  ちょいちょいと手で何かを求められたので、器に電氣ブランを注いで渡すと、白檀香はそれを一気に呷った。 「やっと、異形の神の時代が幕を開ける‥‥いんや、もう始まっているのかもしれないな」 「なんだそれ、どういう意味だよ」  俺の問いに、白檀香はにやにや笑うだけで答えない。その異形の神の時代とやらに、思いを馳せているのかもしれないが、何か企んでいることだけは確かだった。
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