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それが運命だと言われればそこまでだが、自分の気持ちの部分では、神示協会絡みの犠牲者は出したくないのが本音だった。
そもそも、善なる神は人間を平等に扱い、個々に情をかけるべきではない。そんなこと分かっている。でも、近しい人間すら守れない奴が神さまを名乗っていいのだろうか。人間の生み出した悪意によって、善なる人間が命を落とすのを、神さまの地位を言い訳にして傍観するなんて、多分俺には出来ない。
「あーもう、ごちゃごちゃ考えるのは辞めだ!」
人目につかない路地で、自分の両頬をパチンっと叩く。迷うな。精神を集中しろ。今自分がやるべきことは、梢さんを見つけて落合さんを安心させることだ。神さまの在り方なんてものは、あとあと考えればいい。
たぶん如月も同じことを言うだろう。落合さんが俺たちに助けを請うのなら、救う以外の選択肢はない。
俺はすぐさま左手を上げ、宙に向かって指を鳴らした。人間に紛れて生活をする人界側———俺や白檀香や如月は、御神木が持つ生命力を使って、自分の身体を受肉させている。信仰の力を一身に受ける杉の木。そこから発せられる生命力の粒子を、神通力を使って身体の形に凝縮させる。すると、特殊な力を持っていない人間でも目視でき、触れることも体温を感じることも出来る。
一見すると便利な力だが、神通力の消耗が著しいので、戦闘に注力する翁や三日月や貂蝉は、よほどのことがない限りは受肉しない。
全ては余計な力を使い、戦闘能力を落とすのを避けるためだ。街を守る神さまであれば、それが普通な気もするが、人間と交流する人界側はそうもいかない。時と場合によって神通力を使い分け、普段と戦闘時でチャンネルを切り替える必要がある。
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