異形の神たち

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「禍津神討伐会議に加え、次期統括役の話しも出るだろう」  白檀香はそう言うと、すっかり灰になった封筒を見遣る。俺も煙草を吸いながら、ぱらぱらと転がる灰を眺めた。  時期統括役を決める会議なんか、俺たちには関係ない。どうせどっかの偉い神様がやるに決まっている。 「如月、これは好機だと思わないか?」  白檀香の言葉に、煙が変なところに入って、ごほごほと咽せる。 「何言ってんだお前‥‥俺たちみてぇな嫌われもんが統括役なんて、無理に決まってんだろ」 「ならそうかもしれないが、もう神格で決める時代じゃない。最高位はで決めるもの、信仰心に胡座をかいた能無しどもを、失墜させる時なのさ」  白檀香はニヤリと笑うと、扇を閉じた。紙の焦げる臭いが広がっていたはずなのに、白檀の香りが強くなった気がする。 「‥‥‥‥冥界の権限を持つ者以外、冥界の穢れから生まれた禍津神は殺せない」  窓枠に腰掛け外を見つめる如月をちらりと見遣って、そんなことを言う。 「使者である茶々(火車)の行方が知れぬ今、神界に対して不干渉を貫く冥府の番人を除いて、その権利を有しているのは、死神の亜久莉とだけだ」 「だったとしても、俺が選ばれることはないよ」  此方を見ないまま、如月は呟いた。  今でこそ人間の形をしているが、元々は木霊。人間はおろか、形すらも持っていなかったという。毎日毎日、ただ七杉神社の杉の木から、人々を眺めているうちに、人間に憧れる気持ちが募っていった。そこで如月は、たまたま通りかかった茶々に「形を手に入れる為にはどうすれば良いのか」と尋ねたらしい。 「あ?そんなに身体が欲しいならやるよ」  当時、冥界とのいざこざで身を隠したかった茶々は、二つ返事で身体を渡し、自分は近くに居た猫を依代にした。後から聞いた話しによれば、茶々はこの時番人の仕事も押し付けるつもりだったらしい。しかし、冥界から茶々を探しに来た亜久莉に見つかり、火車の仕事は続けざる終えなくなったのだ。
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