2 年下騎士は偉そうで

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「こちらが、グラーニ小隊長の体格にはよろしいかと」  厩舎係から優しい目をした栗毛の馬を引き合わされ、アイリーネは顔を輝かせた。 「うわあ、いい馬だね」  人の言葉が分かるかのように若駒(わかごま)は耳をピンと立てる。アイリーネが手を差し出すと、ゆっくりと鼻先を近づけてきた。 「よろしくね」  そっと鼻面を撫でると、馬は「もっと」とせがむようにすり寄ってくる。アイリーネは目を細めた。 「ふふ、かわいい。私、初めて乗った馬も栗毛だったんだ。懐かしいなあ」  背後から忍び笑いのようなものが聴こえてきてアイリーネが振り返ると、フィンが声を押し殺しながら肩を揺らしていた。 「な、何?」  フィンはいかにも可笑しそうに言った。 「いや……ガキみてーだなと思って」  年下(ガキ)に言われたくないよとムッとしつつもアイリーネは言い返すのをこらえ、フィンの傍で別の厩舎係に(くつわ)を引かれて立っている艶々とした黒い馬に視線を向けた。 「そっちは見事な青毛だね」  こちらも均整の取れた良い馬だとひと目で分かる。 「……でも、フィンにはちょっと大きくない?」  アイリーネの率直な感想に、今度はフィンがカチンときたような顔になった。フィンは数歩踏み出し、アイリーネのすぐ目の前に立った。 「俺伸びざかりだからな」  少し高い視点から挑戦的にアイリーネを見下ろし、不敵な笑みを浮かべる。 「おまえはもう伸びないだろうけど」  アイリーネは眉を顰めた。なるべく受け流そうと心掛けてはいるが、一矢報いてやりたい気持ちが抑えられない。 「そうだね」  アイリーネはできるだけ余裕ぶった笑顔を作ってみせた。 「私もう子供じゃないから」  フィンは一瞬目を見開くと、不愉快そうに唇を噛んだ。  二人の険悪な雰囲気に耐えられなくなったのか、厩舎係の一人が遠慮がちに提案した。 「あ、あのう、試しに少し走らせてみてはいかがですか?」    ◇  ◇  ◇
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