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いつか手紙を受け取って
左腕は起きると元の位置にしっかり収まっていた。昨日裕樹が最後に言いかけたことと、左腕が戻ったことから私は最悪な結論に達しつつあった。うその混じった周りくどい手紙が限界なのだとしたら、間違いなく昨日の告白はタブーだ。
祐樹に連絡する勇気は、ない。
ミカに会わない二十二歳の一日はいつもより味気なく感じた。ミカは私ではなかった。小さな友達だったのだと今更気づく。私はいつも気がつくのが遅い。「ミカ」だって私だって小学一年生の美香との時間は毎日の楽しみでもあったはずだ。
そんなことを考えて夜ご飯の食器を洗いながらニュースを聞いていた私は、流れてきたニュースに耳を疑った。
「大田区に住む二十二歳の女性、岸田麻依さんが自宅で死亡しているのが発見されました。胸部に数カ所刺し跡があったことから、警視庁は殺人の疑いで捜査を続けています」
私はこの世界で生きていける。でも、それでも……
『――好きです。これから一緒に生きてくれませんか』
左腕を抱きしめた。
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