右手が失くなった

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その後、彼女は仕事を辞めた。 子どもとふれ合える教職を彼女は気に入っていたし、向いてもいたと思う。だけど、『左手じゃ黒板に字を書けないし、子どもたちにはトラウマを植え付けてしまった。私と会うと思い出すかもしれない。何より感染したら怖い』ということで自ら辞職を選んでいた。 器用な彼女はすぐに左手でいろいろとできるようになり、オンラインで子どもに勉強を教える仕事を始めた。これなら直接会う必要はないし、彼女も子どもと関われる。黒板に字を書く必要もない。見事なことを思い付いたものだと思った。 結局、彼女の右手が何故あんなことになったのかは、わからず仕舞いだった。 けれど、誰よりも彼女のそばにいて、誰よりも彼女と触れあっているはずの僕に同じ症状が現れることはなかったから、感染するものではないのだろう。 ただ、同じような事例は、国内に留まらず、世界の何ヵ所かで確認されていた。手だけではなく、足とか、目に症状が現れる場合もあるらしい。 それらの症状が出た人に共通点はなく、面識もなかった。原因は相変わらず不明なままだった。
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