Bloom 6 堰かれて募る恋の情……なんて言うけれど

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「今まで優しくしていただいたんですから、もう充分でしょう。そろそろ社長の足を引っ張るのはやめてください」 ぐうの音も出ない私に、篠原さんは踵を返す。反応を求める気はなかったようで、彼女はハイヒールに足を入れると、振り返りもせずに立ち去った。 (当然だ……) 甘えて頼って、諏訪くんに言われるがまま同居生活を続けてきた。 ここに来て三ヶ月ほどが経つのに、早く出ていくと考えているわりには新居を決めていたわけじゃない。こっそり内覧には行ったものの、結局は進展がなかった。 そういう自身の怠慢が起こしたこの状況は、自業自得でしかない。 (出ていこう……。このままじゃ諏訪くんの足を引っ張るだけだよ……) 篠原さんは、もしかしたら諏訪くんのことが好きなのかもしれない。そうじゃないとしても、秘書として社長の足を引っ張る人間が傍にいるのは不快に違いない。 休日にエプロンをつけてのんきにしていた私は、パリッとしたスーツを着こなして凛とした佇まいでいた彼女の足元にも及ばない。他人を羨んで肩を落してもいいことはないのに、悔しさや歯がゆさを持て余して負の感情を上手く鎮められない。 諦めるつもりだった恋情が、心を揺さぶってくる。 書斎の場所を知っていた篠原さんが、当たり前のように合鍵を預けられている彼女の信頼が……。諏訪くんにとってどういう意味を差すのかを考えるのが怖かった。 ふたりの関係を邪推して、行き場のない想いが未練がましくも大きくなった気がしたけれど……。彼が帰宅したら、真っ先に『出ていく』と伝えようと思った――。
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