Bloom 7 恋は曲者、あなたは変わり者

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(当たり前だよね……) 「ごめんね、きっとこれまでにもたくさん不自由な思いをさせてたよね。くつろげなかったり、なにかを我慢したり……そういうことがたくさんあったんだと思う」 「違う!」 申し訳なさでいっぱいの私に、力強い声が返ってきた。 優しい話し方が常の諏訪くんからは想像できなくて、びっくりしてしまう。 謝罪を紡ごうとした唇は動かせず、訪れた沈黙が私たちを包む。わずかに視線を逸らした彼は、程なくして私を真っ直ぐ見つめてきた。 じっと見据えてくる瞳に、鼓動がトクンと跳ねる。怖くはないけれど、諏訪くんがいつもと違うのは明らかで、どうすればいいのかわからない。 彼は戸惑うように眉を寄せ、そしてなにかを観念するがごとく息を吐いた。 「俺、香月が思ってるような奴じゃないよ。別にいい奴じゃないし、誰彼構わず優しくしたりもしない」 「そんなこと……」 「あるんだよ。俺はいい奴どころか、狡猾なくらいだ」 「なに言ってるの、諏訪くん。諏訪くんは社員をすごく大切にしてるし、ただの友達の私にだって本当に優しくしてくれてるじゃない」 納得できなくて言い募れば、諏訪くんがふっと鼻先で笑った。 「社員を大切にするのは仲間だと思ってるからだよ。タケや篠原、スタッフたちが助けてくれるからこそエスユーイノベーションは成長できたし、一緒に戦う仲間を大切にするのは普通のことだ」 「でも、私のことは無条件で助けてくれたよ」
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