Bloom 7 恋は曲者、あなたは変わり者

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彼は謙虚すぎるんじゃないだろうか。社員を大切にする理由はわかるけれど、それでもやっぱり私への親切は〝いい奴〟以上の人間であると主張したい。 「……バカだな、香月」 ところが、諏訪くんは納得することもなく、逆に呆れたような笑みを浮かべた。 「本当にわからない? 俺の本心」 バカと言われたことは気にならなかった。ただ、彼が言わんとしていることが理解できなくて、それを知りたいあまり素直に頷く。 すると、諏訪くんが諦めを含ませた微笑みを零し、次いで意を決するように真剣な面立ちになった。 「俺は別に、無条件で香月を助けたわけじゃない。香月の事情を知って力になりたいと思ったのも本音だけど、心の底ではあわよくば……って気持ちもあった」 彼の言いたいことがよくわからない。私が感じていた優しさは、つまり偽りだったということだろうか。とてもそうだとは思えなくて、にわかに信じがたかった。 「あわよくば、って……?」 「その言葉通りだ。困ってる香月を助けて、とことん甘やかして、香月の居心地を好くして……俺がいないとダメだって思ってくれればいいとまで考えてた」 途中まではただの親切だと受け取っていたけれど、最後の言葉に引っかかった。 だって、それはまるで執着に似た感情でありながら、恋心のようなものを感じたから。けれど、それはありえないと、すぐに心の中で否定した。 「あの再会だって、本当は俺が香月に会いたくて根回ししたんだ」 その数秒後、予想もしていなかった真実に言葉を失くした。
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