Bloom 7 恋は曲者、あなたは変わり者

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「諏訪くんにそんな意図があったなんて知らなかったから、びっくりしたけど……。諏訪くんはいつも私の気持ちを優先してくれたし、絶対に怖がらせたり不安になるようなことをしたりしなかったでしょ」 「それはまぁ……。これでも、香月に嫌われたくないと思ってるからな」 だとしても、本当に狡猾で最低なら、きっとそれなりのやり方で言い包めて無理強いすることはできたし、下心だって隠さなかったはず。 決してそんなことをしなかった彼には、やっぱりどれだけ感謝しても足りない。 「私、相手が男の人ってだけで、その人がいい人であっても嫌な記憶が蘇って怖くなることや、足が竦むようなときだってあったの。でも、諏訪くんと一緒にいたこの三ヶ月間、諏訪くんの前では一度もそんな風にならなかった」 諏訪くんへの想いを自覚したのはまだ最近だけれど、最初から平気だったのは相手が彼だったから。他の人だったら、間違いなくこうはいかなかったと思う。 「美容師時代には平気なふりをしようとしても、体が震えたり強張ったりして思うようにならなかったのに、諏訪くんの前ではずっと大丈夫だった。それってきっと、諏訪くんが私に対してひとりの人間として向き合ってくれてたからだと思うの」 今になって気づいたことは、私の諏訪くんへの信頼を裏付けるようで、自然と彼に笑みを向けることができていた。 「だったら言わせてもうらうけど」 引かない私に諦めたのか、諏訪くんがため息を漏らす。 「俺は香月と付き合いたいと思ってる」 刹那、きっぱりはっきりと言い切られた彼の願望に、胸が大きく高鳴った。
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