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その週末、少しの憂鬱を抱え、敦子と女子会の会場になっているお店に向かった。
パーマをかけているロブヘアの私は、髪にはワックスをつけて整えただけ。
服は、淡いブルーの生地に白い小花がプリントされているミディアム丈のワンピースを選んだ。丸首のデザインで、袖は五分丈になっている。
「志乃がヘアアレンジしてくれたからテンション上がる! さすが志乃!」
「それくらい、またいつでもしてあげるよ」
鎖骨まで伸びた彼女の髪は、今日はヘアアイロンで巻いたあとで両サイドを編み込み、ハーフアップにしてルーズ感を出してみた。
カジュアルな女子会だけれど、セミフォーマルでもいけるヘアセットだ。
美容師に戻るつもりは今のところないけれど、これくらいならいくらでも喜んで請け負う。
恩返しにはならなくても、親友の喜ぶ顔が見られるのは嬉しい。
「昨日のヘアアレンジも可愛かったけど、こっちもいいなぁ」
昨夜は敦子の宣言通り、誕生日のお祝いにフレンチレストランでご馳走してもらった。
そのとき、待ち合わせた駅前の百貨店の化粧室で簡単なヘアアレンジをしてあげると、彼女はとても喜んでくれた。
「昨日のヘアアレンジなら簡単だし、今度教えてあげるね」
「ありがとう。あ、お店ここだ!」
立ち止まった敦子が、お店の看板を確認して中に入る。
忘れかけていた憂鬱な気分に飲み込まれそうになりつつ、私も彼女の後を追って店内に足を踏み入れた。
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