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「俺も男だから、やっぱり好きな子には触れたい。でも、香月を傷つけるつもりはないし、香月が俺と付き合ってくれるなら香月のペースで進んでいければ充分だと思ってる。だから、まずは香月の気持ちが知りたい」
(言ってもいいのかな……)
鼓動はさっきからドキドキと脈打って、もうずっと忙しなく動き続けている。
諏訪くんに想いを伝えるのは緊張するし、不安もたくさんあるけれど……。彼と一緒なら、少しずつでも前に進める気がした。
「私……」
穏やかな眼差しの諏訪くんが、私を優しく促してくる。
「私も……。諏訪くんのことが好きです……」
それに背中を押されるように想いを紡げば、彼は意表を突かれたように目を大きく見開き、数瞬して顔をくしゃりと歪めて破顔した。
「予想以上だ……」
「え?」
「振られなければいいと思ってたくらいなのに、香月に好きだって言ってもらえるとは夢にも思わなかった」
諏訪くんは本当に嬉しそうで、そんな風に言ってもらえる資格なんてないと思うのに、胸の奥から喜びが突き上げてくる。
それが自分自身の一番素直な感情だと自覚したとき、想いをごまかさずに伝えてよかった……と心底思えた。きっと、この気持ちに向き合っていなければ、私はすぐに後悔に苛まれていただろう。
「香月」
優しい声に促され、彼を見つめる。真っ直ぐな視線とぶつかれば、鼓動が大きく跳ね上がった。
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