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「俺、香月を大切にするって約束する。だから、俺と付き合ってほしい」
改めて伝えてくれた言葉が、心をふんわりとくすぐってくる。
上手く言えないけれど、面映ゆいような感覚に笑みが零れ、迷うことなく頷いた。
「うん。……私、上手く付き合えないかもしれないけど、諏訪くんと一緒にいたい」
「上手く付き合う必要なんてないよ。香月は周囲と比べてそんな風に言ったのかもしれないけど、俺は付き合い方なんてそれぞれでいいと思ってる」
「諏訪くん……」
「上手くいかないこともあるかもしれないけど、少しずつ進んでいけばいいんだ。そうやって、俺たちなりの関係を育んでいこう」
いつだって、諏訪くんは私の気持ちを慮ってくれる。
私は彼のようにはできないかもしれない。けれど、寄り添うことや向き合うことは忘れずにいようと思う。
上手くできないことがあっても、ゆっくりしか進めなくても、きっと諏訪くんなら私を待っていてくれる。そこに甘えてしまうだけになるのは嫌だけれど、少しずつでも彼に見合う女性になりたい。
そうやって歩んでいけばいいのかもしれない、と思えた。
不意に差し出された右手に、私は瞬きをしたあとで微笑みを浮かべた。
まだすんなりとは触れない。心を整えてタイミングを取らなければ、自分から手を出せない。
それでも、おずおずと触れて握り返した骨張った手は怖くなくて、その温もりに包まれながらほんの少しだけ前に進めた気がしていた――。
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