Bloom 7 恋は曲者、あなたは変わり者

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「あの、諏訪くん……」 「ん?」 「訊いてもいいかな?」 「いいよ」 風呂と夕食を済ませ、いつものようにソファに並んでリハビリと称した触れ合いをしていたとき、香月が戸惑いがちに俺を見た。 今、そんな顔をされるのはやばい。なんてことは決して口にせず、俺の様子を窺うような彼女に優しく微笑む。 「その……諏訪くんは、いつから私のこと……」 香月は、俺の気持ちがいつから彼女にあったのかを知りたいのだろう。 「明確にはわからないかな。ただ……」 曖昧な笑みを零し、手に軽く力を込める。香月が肩を小さくびくつかせたが、嫌がっている様子はなさそうだ。 「高校のとき、俺は香月が好きだったんだ」 「えっ?」 大きな目を真ん丸にして驚く彼女に、ふっと笑ってしまう。 「一目惚れとはちょっと違うけど、それに近いものがあるかな。でも、香月は男が苦手だって知ってたし、結局は告白もできなかった」 あの頃から、俺はずっと後悔していた。大人になってからも香月のことが忘れられなくて、なぜ彼女に気持ちを伝えなかったのか……と考えたことは数え切れない。 「そのうち諦められると思ったし、一度は吹っ切れたつもりでいた。でも、香月と再会したとき、自分の中の香月への気持ちは消えてなかったんだって気づかされたんだ」 かあっと頬を赤らめる香月が、俺から視線を逸らす。戸惑う表情も可愛くて、腕の中に閉じ込めてしまいたい衝動に駆られる。
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