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「敦子と志乃! 遅いよ~」
私たちを見つけた友人に、「まだ十分前でしょ」と敦子が苦笑を返す。
広々としたイタリアンレストランの大テーブルをリザーブしていたようで、テーブルには十脚の椅子が並んでいる。
「あとは男子だけど、ギリギリになるって」
「じゃあ、みんな揃ってから注文しようか」
「え? 男子も来るの」
友人と敦子の会話に口を挟むと、敦子が「そうだよ」と笑う。
女友達だけの集まりだと思っていたから、わずかに動揺してしまった。
「あ、来たじゃん!」
直後、対面の椅子に腰かけていた友人が、入り口の方を指差した。
振り返ると、ちょうど四人組の男性グループが店内に入ってきたところだった。
「よう! みんな久しぶりだな」
先頭を歩いていた男性は、私はあまり話したことはなかったけれど、よく知っている。
好きだった人の親友、川本だったからだ。
(まさか……)
過った予感に、鼓動が跳ね上がる。
考える間もなく三人目の後ろから歩いてきた最後のひとりと目が合った刹那、息が止まるかと思った。
「……諏訪、くん……?」
「ああ、香月か。久しぶり」
「……っ! あ、うん……」
声が喉に張りついたように、言葉が上手く出てこない。
抱えていた憂鬱よりも鼓動が大きくなっていくことに気を取られ、足が地面に張りついたように動けなかった。
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