Bloom 8 恋は盲目でも、

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「志乃、ドリンクはなにがいい?」 諏訪くんの声にハッとする。朝からドキドキしすぎていたせいかぼんやりしてしまい、六本木にある大型商業施設内の映画館にいることを忘れかけていた。 なにが観たいかと訊かれ、上映ラインナップを『せーの』で指差したところ、人気の海外アニメーション作品で一致したのだ。ただ、今にして思えば、彼はさりげなく私の好みをリサーチしていた気もする。 「俺はアイスコーヒーにするけど」 「じゃあ、同じものにしようかな」 メニュー表も見ずに答えれば、諏訪くんが「ん」と微笑んだ。甘やかな表情に、胸がキュンと高鳴る。私たちの前にいる売店スタッフの女性も、頬を赤らめていた。 こういうとき、彼の人たらしな部分が心配になる。甘い顔は私にしか見せないでほしい……なんて本音は言えないのに、小さな嫉妬が確かにあった。 それを隠せたのかはわからないけれど、映画はとてもおもしろくて、素直に満喫できた。諏訪くんはどうかと気になってときどき隣を見れば、意外にも普通に楽しんでいたようで、その様子を見てホッとした。 「おもしろかったな」 「うん。でも、意外。諏訪くんって、こういうジャンルは観ないかと思ってた」 「俺、基本的になんでも観るよ。映画も本も雑食だし。志乃は?」 「私は邦画が多いけど、ホラー以外はわりと観るかな。漫画は恋愛ものとか、小説だとミステリーが好きだよ」 「俺もミステリーは結構読むな。あ、おすすめの作家がいるんだけどさ」 どんなに些細なことでも、彼のことを知っていけるのは嬉しい。またひとつ新たな発見があったことに、自然と頬が綻んだ。
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