Bloom 8 恋は盲目でも、

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* * * 翌週、会社でパソコンに向かっていた私は、ふと手を止めた。 「木野さん、このデータなんですけど、ちょっとわかりにくくて……。この集計、過去のものも一覧にして見れるものってないですか?」 既存のアプリの開発費が纏められたデータを開いたパソコンを指差せば、木野さんが眉を下げて笑った。 「あるにはあるんだけど、あんまり見やすくないのよ。いずれ一覧にしたいと思ってるんだけど、うちができてからの六年分のデータだからちょっと大変だし」 このデータは一見すればわかりやすく思えるけれど、会社名ごとに並べられていて日付や費用の大小がわかりづらい。これでも大きな問題はないものの、日付や費用によっても整理されたものを確認できれば、もっと効率よく業務を進められるはずだ。 「これ、私が作り直してもいいですか? 入力作業だけですし」 「……そうね。ついでに過去にうちが手掛けた仕事も確認できるし、やってみる?」 許可をもらった私は、早速パソコンに向き直って取り掛かった。簡単な業務だけれど、初めてすべてひとりで任された。それが嬉しくて、張り切ってしまう。 「あ、社長。おかえりなさい」 その数分後、男性社員の声にハッとして顔を上げると、篠原さんとともに出先から戻った諏訪くんの姿が目に入った。 「どうでした?」 「まずまずってところかな。あとで修正箇所を送るからチェックしておいて」 ふたりの会話が勝手に耳に入ってくる。彼と付き合ってからは特に、その声を拾うのが上手くなった。
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