8041人が本棚に入れています
本棚に追加
最近は随分とスキンシップにも慣れてきて、これくらいのことなら身構えることもなくなってきた。むしろ喜びの方が大きい。
テーブルに雑炊をよそった器を置き、諏訪くんを呼ぶ。笑顔を見せる彼の体調は心配だったものの、ひとまず普通に食べてくれてホッとした。
「雑炊って久しぶりに食べたな」
「本当? 私、昔から好きで、よく作ってたんだ」
なんてことはない、簡単なもの。鍋に入れたご飯に水と調味料を加えて煮込み、溶き卵を回しかけて刻んだねぎを散らすだけ。今日はだし汁と醤油ベースで作ったけれど、ひとり暮らしのときはめんつゆで代用していた。
食欲のないときや体調が悪いとき、それに精神的に参ってしまったときでも、この卵雑炊だけは少しは食べることができ、随分と助かったものだ。
「いいな、これ。食べやすいし、なによりもうまい」
「よかった。おかわりもあるよ」
「じゃあ、もらおうかな。これならいくらでも食べられそうだし」
安堵の笑みが零れる。トラブルがどうなったのかはもちろん、諏訪くんの体調が心配だったけれど、彼はおかわりした分も綺麗に平らげてくれた。
いつもは朝食後にコーヒーを淹れるけれど、徹夜明けの諏訪くんの胃には悪そうで、今朝は温かいほうじ茶を出した。彼は一口飲み、力が抜けたように微笑んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!