8041人が本棚に入れています
本棚に追加
出勤すると、社内では昨日のトラブルが解決したという話で持ち切りだった。それだけ、みんなが心配していたんだろう。
『心配しなくていいよ。トラブルは解決したし、村野社長とも和解できたから』
家を出る前にそう言った諏訪くんは、詳しくは語らなかったけれど。児嶋さんいわく、諏訪くんが村野社長に真摯に頭を下げ、早急にバグを解明したのだとか。
その後、諏訪くんが先方に残ってほぼひとりで復旧作業を行い、児嶋さんは社内に戻って遠隔で操作していたらしい。深夜一時頃に会社に戻ってきた諏訪くんは、児嶋さんと篠原さんを帰らせ、ひとり社内に残ったようだった。
「さすが社長だなー」
「学生時代に起業したってだけでもすごいけど、初期の頃のアプリやシステム開発はほとんどひとりでしてただけあるよね」
「副社長もすごいけど、やっぱり社長は別格だよな」
エンジニアたちはそのすごさが肌でわかるからか、諏訪くんのことを口々に褒め、そこから〝社長のかっこいいところ〟と題したくなるような会話が続いた。
木野さんたち事務員の面々は、口は挟まないものの相槌を打っている。そんな社員たちを前に、彼がいかに尊敬されているのかがよくわかった。
褒められているのは諏訪くんで、私はただそれを聞いているだけ。けれど、恋人がこんなにも素敵な人だと改めて実感でき、心の中では誇らしげになる私がいた。
最初のコメントを投稿しよう!