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今夜は、諏訪くんのリクエストでハンバーグを作った。チーズ入りのハンバーグにデミグラスソースをかけた、少し贅沢な一品だ。
彼の味覚はどこか子どもっぽいところがあって、たとえばエビフライや唐揚げといったメニューを筆頭に、カレーやハンバーグなんかも好物らしい。
前に作ったグラタンやビーフシチューも気に入っていたようだけれど、群を抜いてハンバーグが好きだと話していた。今日はさらに手間をかけてチーズも入っているから、喜んでくれるだろう。チーズインハンバーグが好きなこともリサーチ済みだ。
数十分後に帰宅した諏訪くんは、すぐにハンバーグを見て瞳を緩め、チーズ入りだと知るといっそう嬉しそうにした。予想通りの反応に、私も笑顔になる。
「家でこういうのが食べられると思わなかった」
「喜んでくれてよかった」
「ありがとう。でも、俺は志乃の笑顔に一番癒されるから、志乃がいてくれれば充分だけど」
ふわりとたわませた瞳で私を捉え、甘い笑みを向けてくる。
疲労困憊しているかと思いきや、彼は今夜も私の心を捕らえて離さない。ドキドキと高鳴る鼓動を隠すように俯きつつも、素直に喜んだ私の頬が綻んでしまう。
諏訪くんは、それ以上はなにも言わずに笑顔でハンバーグを味わっていた。なんとなくむずがゆい雰囲気の中、彼と他愛のない会話をしながら夕食を平らげた。
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