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「そうだ、諏訪くん。よかったら、ヘッドスパしない?」
「え?」
唐突に提案した内容が不思議だったらしく、諏訪くんはきょとんとしている。
多忙な彼にしてあげられることはないかと考えたとき、ヘッドスパが思い浮かんだ。
手元には普通のシャンプーやトリートメントしかないけれど、それでも少しは疲れが取れるはず。他の人に触れるのはまだわずかに躊躇してしまうものの、諏訪くんならその心配もない。
「諏訪くんの家の洗面台、すごく広いでしょ。前からヘッドスパできそうだなって思ってたの。ダイニングチェアを持って行ってみたら高さもなんとか合いそうだし、頭がすっきりすると思うからどうかな?」
首を傾げれば、彼が喜びと申し訳なさを同居させたように笑った。
「それは嬉しいけど、志乃だって疲れてるだろ。昨日は俺の帰りを待ってあまり眠れてないだろうし、そんなに気を遣わなくてもいいよ」
「気を遣ってるわけじゃなくて、諏訪くんのためになにかしたいなって思ったの。だから、むしろやらせてほしいっていうか……」
食い下がる私に、諏訪くんがふっと口元を緩める。直後、「じゃあ、甘えようかな」と口にした彼は、その面持ちに喜色を浮かべていた。
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