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「終わったよ」
「……ん」
曖昧な返事を紡ぐ唇とは裏腹に、諏訪くんが起きる気配はない。それどころか、彼は再び寝息を立て始めた。
形の綺麗な唇が、小さな吐息ともつかない呼吸を繰り返す。ただの寝息なのにやけに色っぽく思えて、諏訪くんの唇に見入ってしまった。
(いつか、キス……とかしちゃうのかな)
心の中で呟いた言葉に、頬がボッと熱くなる。
未だに自分から触れにいくときは心構えが必要で、彼に触れられるときにも緊張するのに、最近はこんな想像をしてしまうことが増えた。
(私、変だよね……。こんなこと考えてるなんて……。でも……)
不思議だけれど、前みたいに諏訪くんとの先をまったく想像できない……なんてことはない。彼とのスキンシップを、唇が触れるその瞬間を、密か何度も想像している。
手を繋いだあの日からは特に拍車がかかり、自然と諏訪くんの唇に目がいくようになり、無意識に自分の唇を触ることもある。
(なんでこんなこと考えちゃうんだろ……。諏訪くんは私のペースに合わせてくれてるっていうのに……)
邪念を追い払うがごとく首をブンブンと横に振り、息を大きく吐く。もう一度声をかければ、彼はようやく意識が覚醒したようだった。
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