Bloom 8 恋は盲目でも、

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「志乃」 「はい……」 緊張を隠せなかった私に、「なんで敬語?」と彼がクスクスと笑う。楽しげで幸せそうな表情に、胸の奥がキュンと戦慄いた。 「キス、してもいい?」 予想だにしていなかった言葉に固まってしまう。その意味を理解するまでに時間を要し、しばらくして状況を把握したときには頬が熱くなっていた。 諏訪くんはきっと、私がわずかでも拒絶の姿勢を見せれば、絶対に無理強いはしない。彼なら間違いなく、笑顔で『無理しなくていいよ』と言ってくれる。 (でも、私……) 何度も想像した、諏訪くんとのキス。脳内シミュレーションではいつも、不安や恐怖を感じることはなく、ドキドキしていた。 触れたい。 そう感じるようになったのはいつだっただろう。わからないけれど、最近はそう思うようになっていた。 だから、上手く言葉にできない想いに背中を押されるように、恥じらいを隠せないまま小さく頷いた。 刹那、彼が穏やかに瞳を緩め、首を縦に振った。 伸びてきた骨ばった手が、そっと頬に触れる。何度もリハビリをした中で、こんなにも緊張したことはなかったかもしれないけれど、不安や恐怖はなかった。
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