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寒さが厳しくなった、十二月初旬の土曜日。
小さなカフェで、久しぶりに敦子と会えた。彼女は引っ越しに加え、式場巡りや両家への挨拶で忙しい日々を送っていた。そのため、最近は電話とメッセージでのやり取りばかりだったのだ。
ちなみに、結婚式の日取りは来年の七月らしい。
改まってお祝いを伝えれば、数日前に名字が赤塚から清水になった敦子が照れくさそうに微笑んだ。
「これ、お祝い。こっちは諏訪くんと私から」
「諏訪くんからも⁉ 嬉しい、ありがとう!」
私からはプリザーブドフラワーがあしらわれた壁掛け時計、諏訪くんと共同のものは彼女のお気に入りのブランドのペアグラスにした。
「式場も決まってよかったね」
「うん、なんとかね。喧嘩が絶えなくてどうなるかと思ったけど」
「でも、幸せそうでよかった」
「その言葉、そのまま返すけど」
にんまりと笑った敦子が、「幸せオーラが滲み出てるよ」とからかってくる。
「諏訪くんからは、飲み会のときにはっきりと『協力してくれ』って言われたから、志乃は捕まっちゃうだろうなぁと思ってたけどさ。こんなに幸せそうな顔してる志乃が見れて嬉しいよ」
彼女が心配してくれていたことを知っているから、その言葉には重みがある。自分でもわかるくらい、今の私は幸福感を纏っている。
「それにしても、好きな人と同居してて手を出さなかった諏訪くんはすごいよね。忍耐も理解力もあるし、そういう男はなかなかいないよ。志乃とゆっくり向き合って、志乃に恐怖心を感じさせずに堕とすなんて、よっぽど志乃が大切なんじゃない?」
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