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ふっと困ったような顔をした諏訪くんが小さく笑う。頬に置かれたままの手が動き、愛おしげに撫でられた。
「もう一回しようか」
私の願いを察したのか、優しく囁いた彼の顔が近づいてくる。再び瞼を下ろせば、唇にキスが落とされた。
きっとまた、すぐに離れてしまう。
そんな予想をした私が寂寥感を抱くよりも早く、温かいものが唇に触れた。それが舌だと気づく前に、唇をペロリと舐められる。
驚いて開けてしまった目を丸くすれば、今度は唇を食まれた。やわやわと感触を楽しみ、それを繰り返される。
その行為に翻弄されているうちに、半ば強引に唇がこじ開けられた。
「……っ、ん、っ」
漏れた吐息が口腔の力を緩ませ、あっという間に熱い塊を受け入れさせられていた。
舌で歯列をゆっくりとたどられ、口内を探るようにうごめく。同時に動かされた骨張った手は、私の髪や頬を労わるように撫でてくる。
呼吸の仕方がわからなくなった私は、これまでとは違うキスに戸惑いを隠せない。
反して、心も体も拒絶していないことは明らかで。心臓はバクバクと鳴り響き、緊張で体が上手く動かせないのに、胸の奥からは喜びが突き上げてくる。
触れてくる手が優しい。熱を持った唇は強引だからこそ、そのギャップに思考がついていかない。
少しばかりの優しさを残しつつも、容赦なく口腔を暴こうとする。その現実に脳芯がクラクラと揺らめき、息が苦しくなり始めたとき、舌を捕らえられた。
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