Bloom 9 雲となり雨となるとき

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目尻から零れる涙が頬を伝う。 酸素が足りないせいか、思考がとろけていくせいか、息が苦しいのに……。嫌とは思っていないことはわかっていて、縋るように諏訪くんの服を掴む。 「んんっ……!」 刹那、絡まったばかりの舌を吸うようにされ、くぐもった声が漏れ出た。 長く深いキスに、脳が酩酊する。思考はまともに機能せず、彼の行為を受け止めることしかできない。 呼吸もままならなくなって限界を感じれば、ようやく唇が解放された。 「ごめん……。止められない、かも……」 わずかな涙が滲んだ視界に、諏訪くんが映る。熱を孕ませた双眸で私を見つめてくる彼は、背筋が粟立つほどに色気を醸し出し、その艶麗な面差しに息を呑んだ。 下腹部に得体の知れないものがズクン……と響く。ジクジクとした正体のわからない感覚に困惑していると、腰をするりと抱き寄せられた。 布を隔てただけの体温が伝わってくる。じん、と痺れるように体が震え、感じたばかりの感覚が〝疼き〟だと知った。 「……うん。止めなくて、いいよ」 羞恥と不安が声を小さくさせたけれど、諏訪くんは聞き取れたようだった。 端正な顔が驚きでいっぱいになり、程なくして優しい笑みを湛える。直後、体が宙に浮き、彼にお姫様抱っこの状態で移動させられた。 連れて行かれたのは、これまで入ることがなかった諏訪くんの寝室。それがふたりの間で暗黙の了解みたいになっていたのは、彼が私を気遣ってくれていたから。 シンプルなモノトーンカラーの部屋は静寂に包まれ、お互いの呼吸音すら鮮明に聞き取れる。そんな中、大きなベッドに下ろされた。
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