Bloom 9 雲となり雨となるとき

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キスの合間に甘い声が漏れるのも、なにも身に纏っていない素肌に触れられるのも、恥ずかしくてたまらない。反して、体が覚えたばかりの疼きをいっそう強くし、下腹部がじんじんと痺れるようだった。 優しく触れて、少し強く掴んで、舐めて。まるで弱いところを探るように、彼が私を暴いていく。 「志乃……」 時間をかけて解された心と体は、きっと諏訪くんを求めていた。涙に濡れた瞳で彼を見上げ、こくりと首を縦に振る。 それを合図に諏訪くんが私の体を押し開き、ゆっくりと重なっていった肢体がひとつになった。 「……っ! 諏訪く……っ」 体を裂くような甘い痛みに、初めて知る感覚。自分のものとは違う硬い体と、嗅ぎ慣れた彼の香り。すべてを掻き抱くように目の前の首に手を回せば、瞳に張っていた水膜が破れて雫が頬を伝った。 「志乃……。名前で呼んで」 「……しょう」 甘えるような願いを受け入れれば、諏訪くんが幸福感を滲ませて破顔した。 「翔……翔……」 「うん、もっと呼んで。ずっと呼んでて」 涙が零れるほどに甘切なくて、私を満たすなにもかもがひどく愛おしい。 こんな感情は、諏訪くんが相手じゃなければ知らずにいたのかもしれない。彼だからこそ、私はこんなにも幸せな行為があるのだと知った。 「志乃……っ、好きだ……」 睦言のように繰り返す、愛の囁き。私も同じように想いを紡ぎ、諏訪くんの名前を何度も呼ぶ。 思考が酩酊していっても、離れたくなくて逞しい体に必死にしがみついていた。 「志乃……!」 けれど、噛みしめるような低い声を聞いた直後、彼の腕の中で意識を失った――。
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