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ふわふわとした柔らかい感覚に、心を包むような優しい温もり。安堵感の中で瞼を開けると、柔和な双眸が私を見つめていた。
「おはよう、志乃」
まだ脳が覚醒しない。ぼんやりとしたままでいると、クスッと笑われた。
「……え? ……諏訪くん⁉」
「寝ぼけてる志乃、めちゃくちゃ可愛い」
クスクスと笑い続ける諏訪くんが、私の額や頬に唇を寄せる。動揺の中でようやく昨夜のことを思い出し、一糸纏わぬ姿で彼の腕の中にいるのだと気づいた。
「体は平気?」
「……っ」
平気かどうかなんてまだわからない。それよりも、この状況をどうにかしたい。
リネンを纏っていても、その下ではお互いに全裸のわけで。私を抱きしめる諏訪くんに離してくれる素振りはなく、少し足を動かしただけでも素肌が触れ合う。
「あの、諏訪くん……」
「翔」
「あ、えっと……翔……」
名前を呼ぶだけでも恥ずかしくて、ドキドキして。けれど、幸せそうに瞳をたわませる彼を見ると、胸の奥がきゅうぅ……と締めつけられる。
「あの、ちょっと離れてほしいんだけど……」
「ダメ。離したくない」
「でも……」
「まだ五時前だし、もうひと眠りする?」
戸惑う私を余所に、諏訪くんは一向に私の要望を聞き入れる気がないようで、チュッとリップ音を鳴らしながら顔中にキスの雨を降らせてくる。
羞恥心でいっぱいで、ドキドキしすぎて余裕がない。頬が熱くてたまらないのに、あっという間に彼のくちづけに絆されてしまう。
午前五時の寝室は、甘やかで優しい空気に包まれていた――。
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