Bloom 9 雲となり雨となるとき

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「どこが? めちゃくちゃ可愛くて、今すぐにキスしたいくらいだけど」 ところが、翔の目から見る私は、強力な恋人フィルターがかかっているらしい。 甘ったるく微笑まれて瞬時に顔が真っ赤になったけれど、ヘアメイクを頑張ってよかったと笑みが漏れた。 「……ありがとう、ございます」 羞恥心のせいで敬語になると、翔が顔をくしゃりと歪めて破顔した。 店内の二階の最奥の席に案内され、ウェイターがすぐにシャンパンを持ってきた。 大きな窓から見える煌びやかな銀座の街を横目に、彼と「メリークリスマス」と交わして乾杯をする。 アミューズは蒸しアワビのカルパッチョにホワイトアスパラガスが添えられ、アントレは鴨のコンフィの包み焼き。 ポワソンは、オマール海老とじゃがいものミルフィーユ仕立てをアメリケーヌソースで食した。ヴィヤンドゥは、佐賀牛フィレ肉のグリエとフォアグラのポアレ。 デセールは、濃厚なチョコレートの風味が楽しめるブッシュ・ド・ノエルに、シトロンのムース、ピスタチオのマカロンが並び、真っ白ないちごが添えられていた。 ソムリエがペアリングしてくれたワインやコーヒーを含め、どれも本当に絶品で、私は「おいしい」と連呼することしかできなかった。
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