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「とりあえず、年末年始はゆっくりできそうだ」
帰宅してお風呂を済ませると、ソファで肩を並べた翔が顔に安堵を浮かべた。
彼は今、誰もが名前を耳にしたことがあるような大手企業から依頼を受け、新しいアプリの開発に勤しんでいる。職場では重役室にこもり、休日も書斎にある三台のパソコンに向かう日々を送り、最近は昼夜問わず仕事ばかりしていた。
「よかった。ここ最近は睡眠時間も減ってたし、年末年始はゆっくりしようね」
「心配性だな、志乃は。忙しくても、志乃を抱く余裕はあっただろ」
「そっ、そういうのはいいから!」
ククッと笑った翔が、ふと瞳に真剣さを宿らせる。
「俺、今抱えてる仕事が無事に終わったら、独自の開発システムを作りたいんだ。日本はまだまだ脆弱な部分もあるけど、海外の一部の国ではリモートワークが主流になり始めてる企業もあるし、これからの時代はそうやって変化していくんだと思う」
彼が見つめているのは、もっとずっと未来の話かもしれないし、もしかしたら意外と近い将来なのかもしれない。
「だから俺は、日本でもそうなるように、強固なリモートワークシステムを作りたい」
どちらにしても、その目標は私の想像を遥かに超えた大きさで、それがいったいどういうものなのかもわからない。
けれど、真っ直ぐな双眸で目標を語る翔が、私はとても好きだ。キラキラと輝かせた瞳で話す姿は少年のようで、それを実現するために努力できる人だと知っている。
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