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飲み会が始まってから二時間、みんなはずっと盛り上がっている。
一方で、私はこれからのことが不安で心底楽しむことはできず、化粧室に逃げ込んできた。
今は二十一時だし、まだお開きにはならないだろう。いつもは三次会まで繰り出すこともある。
普段なら最後まで参加するところだけれど、再就職先も家も決まらない今、遊んでいる場合じゃない。
どちらかひとつでも、とにかく見つけなければいけない。
【ごめん、先に帰るね】
【悪いんだけど、お金はあとで返すから立て替えておいてほしい】
敦子にメッセージを送り、周囲を気にしつつ化粧室を出る。
幸い、化粧室は私たちのテーブルから死角になっているから、鉢合わせない限りは誰にも見つからずに外に出られるだろう。
予想通り、無事にお店を後にできた。
(よかった。声もかけなかったのは申し訳ないけど、なんとなく言い出しづらい雰囲気だし、空気を壊すのも嫌だもん……)
みんなはしっかりとキャリアを積んでいたのに、私だけ無職で居候の身なんて、本当はとても恥ずかしかった。
励ましてくれたけれど、いたたまれなかった。
卑屈になりたくはないからこそ、このままあの場にいない方がいいと思ったのだ。
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