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* * *
瞼に白光を感じて、眉を顰める。重怠い体と鈍い意識が、私をどこかに引っ張ろうとする。
そんな中で目を開けると、すっかり見慣れた天井が視界に入ってきた。
「……翔?」
隣にいたはずの翔の気配を追えば、ベッドの半分は空だった。シーツに触れてみると温もりは残っていなくて、彼が随分前にそこから抜け出したことを語っている。
いつもは私が起きるまで待っているか、そうじゃないときはキスで起こしてくるのに、珍しいな、と思う。床に落ちていた翔のシャツを借り、リビングに急いだ。
「翔?」
「あ、起きてきちゃったか」
苦笑した彼は、キッチンから顔を覗かせた。その手にはフライパンを持っている。
「オムレツって意外と難しいんだな」
フライパンの中では、ミンチ肉や玉ねぎと一緒に卵も混ざっている。お世辞にもオムレツとは言いがたい状態だった。
「でも、いい匂いだよ」
「味つけには自信がある。見た目は……あれだけど」
「いいじゃない。翔が作ってくれたことが嬉しいよ」
「じゃあ、食べるか」
翔が作ったオムレツもどきを器に移して、テーブルに移動する。いつものように「いただきます」と声を揃えたあと、スプーンで掬って口に運んだ。
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