Bloom 10 七転び八起きも、あなたの傍でなら

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* * * 年末年始はあっという間に過ぎていき、一月ももう終わろうとしている頃。 篠原さんから呼び出されてミーティングルームに行くと、五分ほどしてから彼女と鵜崎副社長が現れた。なんの用件かと身構えかければ、にこやかな顔で「緊張しなくていいからね」と先手を打たれた。 「昨日、翔から聞いたんだけど、うちを辞める予定なんだよね」 「はい。色々とお気遣いいただいていたのに、申し訳ございません」 「いや、それはいいよ。貴重な戦力を失うのは残念だけど、この春には新規採用の募集をかけるつもりだったから、採用枠を増やせばいいだけだしね」 私が貴重な戦力だなんて恐れ多い。けれど、物腰の柔らかい鵜崎副社長らしい言い方だった。 「それに、翔からは『期間限定の採用になると思う』って、最初から聞いてたし」 「えっ?」 「あれ? そういう話でうちで働くことを決めたんじゃなかったんだね。じゃあ、翔が勝手にそう思い込んでたのか」 驚く私に、副社長は不思議そうにしつつも完結させてしまった。 一方、私は翔がそんな風に思っていたなんてまったく知らず、そんな話をしたこともなかったため、なぜ……? という気持ちでいっぱいだった。
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